今回は、香港生まれのユニコーン・スタートアップであるGoGoVanを見ていこう。GoGoVanは、以前紹介した画像認識AI会社のSenseTimeに続く、第二の香港生まれのユニコーン企業だ。
香港でスタートアップと言うと、GoGoVanの名前が先ず挙がる位、香港内では知られているスタートアップである。
GoGoVanとは
GoGoVanを一言で表すと、Uberのトラック版と言える。つまり、オンデマンドで、登録されているドライバーと、個人及び法人の配達ニーズをマッチングするプラットフォームを提供している。
トラックのタイプは、バン/5.5トン・トラック/9トン・トラック/バイク等がある。バイクは主にクーリエ便として利用されている。
気になる点の一つとして、ドライバーが使用する車両はGoGoVanの貸借対照表に載っているのか、それともドライバーの私物なのかがある。市場拡大においてGoGoVanの必要資金が大きく変わるからだ。GoGoVanの車両を見ると、「GoGoVanの用途以外に使えないな~」という位、車両全体に水色のGoGoVanでペイントされているので、少なくとも車両の何割かはGoGoVanが保有しているのではないか、と推測する。
Keyとなる営業指標
登録ドライバー数:800万人
サービス提供都市数(中国本土):300
登録ドライバー数(B to B、中国本土):100万人
ドライバーへの課金:10%/配達
進出している国
先ず、現在GoGoVanが進出している国だが、2013年7月に香港、2014年8月にシンガポール、2014年11月に台湾、2015年に中国本土と韓国、その後インドと6ヶ国だ。シンガポールと同様マーケットが小さい香港では、スタートアップは香港をテストマーケットやプロダクト・サービスを磨く場所として捉えているケースが多い。GoGoVanが進出した国を見ると、香港、シンガポール、台湾と何れもGDP per capitaが大きい一方、マーケット自体は小さい国に始めに進出し、その後に巨大な中国やインドへと進出している。
ドライバー数
次に、登録ドライバー数だが、全体で800万人、中国本土だけで100万人とあった。中国本土では300都市にサービス展開しているので、1都市当たり平均で3,333人のドライバーが登録していることになる。
ドライバーへの課金
最後に、ドライバーへの課金だが、現在は配達毎に配達料の10%に設定しているようだ。以前は無料にしてプラットフォームの土台を広げていたようだが、10%課金へと変えている。例えば、ライドシェアのUberやLyftはドライバーに20-25%の課金をしているはずなので、それらと比較するとまだ低い。まだ赤字のはずなので、これからIPOも視野に入れて課金率を10%から引き上げていきたいだろう。しかし、例えば東南アジアは、こうしたラスト・ワン・マイル(エンドユーザーへの物流)はかなり競争が激しく、巨額の資金を調達したプレーヤーが、課金率を下げたり広告やセールスにお金をつぎ込んでマーケットを取りに来ている。従って、GoGoVanも東南アジアではかなり苦労していると推測する。
予想される今後の成長戦略
それでは、GoGoVanは今後どういう戦略で成長していくのだろうか。以下、自分で予想していく。
- B to B顧客基盤の拡大
- 中国市場へのフォーカス
- 周辺ビジネスの展開
B2B顧客基盤の拡大
先ずは、B to Bの顧客基盤の拡大だ。つまり、個人ではなく法人顧客を増やしていくということだ。
不定期で頻度もそれほど多くない個人ではなく、ある程度の頻度で安定した利用が見込める法人顧客の獲得に注力していくだろう。法人の場合、配達毎ではなく月毎の支払い・管理プラットフォームを提供していて、個人と比較すると一度獲得できればスイッチングコストも低いはずだ。
例えば香港では、以下の法人顧客がいるようだ。日本のMUJIも利用している。
中国市場へのフォーカス
次に、中国市場へのフォーカスだ。GoGoVanは、2017年9月に、中国の58Suyunという、同じ事業で個人にフォーカスした会社を買収して、ユニコーン・クラブ入りを果たした。買収後にCEOが北京に移住して、事業拡大を進めている。2018年7月に追加で2.5億ドルの大型資金調達には、Cainiao NetworkというAlibabaの物流を行っている会社が株主として入った。これをきっかけに、現在GoGoVanは、中国の4都市にて、Cainiao Network向けに試験的にサービスを提供しているようだ。ちなみに、Cainiaoが投資する前に、Gobi Venturesが投資を受託運営しているAlibaba Entrepreneurs Fundが投資していて、それがCainiaoによる投資に繋がったのだろう。
上述したように、東南アジアは競争が厳しい。中国もそうなのだが、Cainiaoと組むことで、もしこれが上手く行きAlibabaの物流が取れれば、一気に取り扱いボリュームを増やすことが出来るだろう。
周辺ビジネスの展開
最後に、マーケットを取れたところで、周辺・関連ビジネスを展開していくだろう。例えば、トラック運転手に対する貸付やクレジットスコア機能、更にはデジタルの支払いプラットフォーム等の金融、既に成熟しつつあるが食品デリバリーだって考えられる。
まとめ
今回は、香港第二のユニコーン企業であるGoGoVanを見てきたが、いかがだっただろうか。
彼らの戦略について、特に参考になるのは以下のポイントだ。
- 香港から始めた後、海外展開していく国の順番(香港→台湾・シンガポール→中国・インド)
- 戦略投資を引き受けることによる巨大企業との組み方や中国市場への入り方
- マネタイズ方法、特に課金率(ドライバーから配達毎に配達料の10%)
香港発のユニコーン企業の一つとして、今後の動きをチェックしていきたいと思う。
東南アジアで最大級 シリーズAで110億円超を調達した香港のスタートアップOrienteとは 上場間近 中国テンセント ミュージックの驚くべき収益源 タイのスタートアップ・カンファレンス Techsauceへ参加!
[…] ちなみに、現在はこのほぼ全てが、配達屋さんによる家までの配送によって行われている。日本の日通やヤマトを始めとする従来の配達業者もそうだし、以前紹介したGoGoVanや東南アジアで攻めているNinja Vanのようなクラウドソース型のスタートアップも、最終的には人によるものだ。 […]
[…] ちなみに、現在はこのほぼ全てが、配達屋さんによる家までの配送によって行われている。日本の日通やヤマトを始めとする従来の配達業者もそうだし、以前紹介したGoGoVanや東南アジアで攻めているNinja Vanのようなクラウドソース型のスタートアップも、最終的には人によるものだ。 […]