物流の肝 ラストワンマイルの未来像とは マッキンゼーのレポート要点

 「ラストワンマイル」という言葉を聞いたことがあるだろうか?物流拠点から最終消費者に商品を運ぶ、最終配送区間のことだ。E-commerceを行う企業にとっては、ラストワンマイルが消費者との接点になるため、他社と差別化を図る大事なポイントになっている。

今回は、このラストマイルにおける物流の未来について考えてみたい。マッキンゼーが以下2つの素晴らしいレポート「Parcel delivery The future of last mile」と「Fast forwarding last-mile delivery – implications for the ecosystem」を出しているので、この中で気になる点について、自分のコメントを加える形で進めていこうと思う。

未来の配達モデル

配送や商品の種類を横軸に、配送地域の人口密度を縦軸に取り、それぞれのマトリクスにおける未来の配達モデルを示したのが上の図だ。

ちなみに、現在はこのほぼ全てが、配達屋さんによる家までの配送によって行われている。日本の日通やヤマトを始めとする従来の配達業者もそうだし、以前紹介したGoGoVanや東南アジアで攻めているNinja Vanのようなクラウドソース型のスタートアップも、最終的には人によるものだ。

ドローン

先ず、郊外の人口密度が低くスペースがある地域では、即日配達や時間指定配達がドローンで行われると予想される。郊外では、配達毎の輸送距離が長いため、そのコストが高い即日配達や時間指定配達で活躍する。一方、例えば15kg以上の重い荷物の配達は課題になる。ドローンが特に重たい荷物を運べないからだ。

既に、日本を含めて世界中の特定地域で実装や実験が行われているが、ドローンの発着には大体2m四方のスペースが必要で、建物や人が密集する都会ではその使用に規制がかかる可能性が高い。ドローンが活躍するのは主に郊外になるだろう。

ロッカー付の自動配送車

B2B(法人用)と即時配達を除いて、都会で配達を行うのはロッカー付の自動配送車になる予想だ。その主な理由は、コスト削減だ。今後上昇していく人件費に対して、自動配送車が配達する方が40%安くなると試算されている。日本の場合は、人不足も理由になるだろう。(注:本レポートは主に独・米・中国を対象に調査し、書かれたもの)

ロッカー付の自動配送車による配達の流れはこんなイメージだろうか。

  1. アプリで配達時間と場所を指定
  2. アプリから自動配送車上の、スマートロッカーを開けるためのパスワードを受信
  3. 指定した時間と場所に行き、パスワードを使ってロッカーを開けて、荷物をピックアップ

もしこれが普及すると、現在世界各地で増加しているロッカーも不要になるかもしれない。自動運転による配送車なので、24時間いつでもどこでも受け取りが可能になるからだ。

アメリカではUdelvというスタートアップが、このコンセプトで実装をしていて日本の丸紅が投資している。何れ自動運転技術を持つメーカーが、この領域にも参入してくるだろう。

出前ロボット

最後は、メディアでも注目を集め始めた出前ロボットだ。都会の5-10km位の限られた区域内で即時の配達において活躍するだろう。上の図では右下の小さなスペースにぽつんと書かれている印象を持つが、即時配達はフードデリバリー市場が含まれているので、マーケットサイズは決して小さくない。

既にアメリカやヨーロッパの一部地域では、starship technologiesやあのsegway等の出前ロボットがサービスを開始している。

各バリューチェーンとプレーヤーの役割

レポートは更に、現在と未来のラストワンマイルのバリューチェーンにおける、自動配達メーカー(車両、ドローン、出前ロボット等のメーカー)(”CV”)、配送会社(”CEP”)、そしてスタートアップの役割について予想している。

先ず、自動配達のメーカーが、現在の製造のみから、オペレーションや配送ルートの最適化(道路の混雑状況、パーキング場所、顧客情報を分析して行う)まで進出するとしている。車両やロボの遠隔操作等を行い、他顧客分も合わせて配送ルートに係るデータを取得できるからだ。

そして、自動配達メーカーと配達のデータを握る配送会社(”CEP”)が協業することで、ラストワンマイルのエコシステムが構築出来ると同時に、配達に関するデータ・ドリブンのビジネスモデルを作れるとしている。

僕は、この予想は必ずしも正しくないと思う。理由は、巨大化した配送会社自身が自動配送メーカーの事業を手掛けたり、その逆も起こると考えているからだ。つまり、ここで描かれているバリューチェーンを1社で全て網羅する、巨大企業が誕生すると予想しているということだ。それが、各国や地域毎に現れるのではないか。

まとめ

今回は、物流の未来と称して、マッキンゼーが発行したレポートを元に書いてみたが、いかがだっただろうか。

  • 現在、人によって行われているラストワンマイルの配達は、3-10年という単位でドローンやロッカー付き自動配達車、出前ロボットによって取って代わる
  • ドローンは、郊外の即日や時間指定の配達分。ロッカー付き自動配達車は、即時やB2B(法人用)を除く都会の配達分。出前ロボットは特に人口密度が高い都会における即時配達分で活躍する
  • ラストワンマイルのエコシステム形成には、自動配達メーカーと配送会社のパートナーシップが必要とのこと
  • 一方、メーカーと配送の双方の機能を有する、バリューチェーンを1社で網羅する巨大企業が誕生する可能性も有るか

この内容が100%そのままは当てはまらないにせよ、未来のラストワンマイル物流を考える叩き台にはなる内容だろう。一般に公開されていて、秀逸な内容なので、気になる人は上記のリンクから是非原本のレポートを読むことをお勧めする。

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