東南アジアにおける最新のテクノロジー投資の概要を把握しよう cento venturesレポート

これまで既に何度か、東南アジアのテクノロジー投資について投稿してきたが、今回cento venturesが新たにレポートを公表してくれたので、そのまとめをざっと書きたい。以前の投稿とは、少し違う視点やデータを分析していたからだ。

ちなみに、cento venturesは日本企業とも関連のある、シンガポール拠点のVCだ。

2018年の総投資額は、前年の倍近くに増加

2018年の総投資額は、計$11B(≒1兆2,000億円)に上り、2017年の約2倍だ。特に2018年上半期に投資が集中している。これは、LazadaやGrab、Go-Jek、Sea Groupというユニコーン達による巨額の資金調達が行われたからだ。

ちなみに、件数ベースでは、2015-2017年よりも低くなっている。

投資サイズ毎の傾向:$5M以上が増加傾向

投資サイズ毎に見るとどうだろうか。

上3つのグラフ、$5M(≒5.5億円)以下の投資件数や総額は減少傾向にある一方、下3つのグラフ、$5M以上の投資件数や総額は増加傾向にある。数字が出ている成長企業が増えてそこに投資が集まる一方、アイデアのみで売上が立つ前段階での投資は選別が厳しくなっているということだろうか。

投資ステージ毎の傾向:シリーズB・Cが増加傾向

投資ステージ毎に見ると、上述したように、金額が小さなPre-AやシリーズAの投資件数が減っている一方、纏まった金額になってくるシリーズBやCの件数は増えている。

各ステージの平均調達金額も算出してくれている。(投資をする際の一つの参考になるので、個人的に有難い!)

2015年以降は大きく変わっておらず、Pre-Aは$0.4M(≒4,000万円強)、シリーズAは$3.2M(≒3.5億円)、シリーズBは$11.6M(≒13億円)だ。

国毎の傾向:2極集中のまま

投資総額について国毎に見ると、インドネシアへの集中が凄い。「シンガポールへの投資も大きいはずなのに。。」と思ったところ、本データはSea Group(Shopee等)、Grab、Lazada等は、東南アジア全域で事業展開しているため、特定国への投資と見なせないので含めていないとの注が。であれば納得がいく。含まれていれば、シンガポールの割合も上がるだろう。

件数では、インドネシアとシンガポールに集中している。

集中度が高いインドネシアとシンガポールを除く、4ヶ国を見ると、ベトナムのみ投資金額が増えている。ベトナムは良いエンジニアが多く、面白いスタートアップが産まれているという理解だ。

マレーシアへの投資が減っているのは意外だった。マレーシアへの投資を公表しているVCも幾つかあるし、2019年にはリバウンドするのではないだろうか。

セクター毎の投資傾向:ライドシェアやEコマースに集中

セクター毎に見ると、Multi-vertical(ライドシェアとフードデリバリー等)とRetail(Eコマース等)に投資が集中している。Financial Services(支払い・送金以外のフィンテック)やReal estate(不動産)、Business Automation(自動化)も増加傾向だ。

Travel(旅行予約等)が減っているのは、ユニコーンのTravelokaの資金調達が2019年にずれ込んだためだ。

東南アジアの主なスタートアップ達

大型の資金調達を行い、株式価値が大きいスタートアップを纏めてくれている図だ。

$1B超えのユニコーンは、GrabとGo-Jekのライドシェア2強。

続いて、LazadaやShopeeを傘下に持つsea、tokopedia等のユニコーンと他ユニコーン予備軍。多くがEコマース(B2CやC2C)で、オンライン・トラベルのtraveloka、ゲームのvng、不動産プラットフォームのProperty Guruも含まれる。

その下の会社群は、自分でも知らないものが多いので、後で調べるとしよう笑 タイ(Zilingoはタイのスタートアップだが)とフィリピンのスタートアップが少なく、今後スターにあるスタートアップが出てくると予想する。

子会社であったり、東南アジア外の企業によって設立されたスタートアップも参考までに載せておく。

Exitの方法:M&Aとセカンダリー・セール

東南アジアのスタートアップは、IPO(SGX、Nasdaq、IDX等)でのExitはかなり限られている。Exitの大半は、M&Aと大きな資金調達ラウンドで新規株主へ売却するセカンダリー・セールによるものだ。

M&Aの買い手はどこから?

M&Aの買い手は、件数ベースだとシンガポール、そして日本(!)とインドネシアが多い。一方、金額ベースでみると、中国が圧倒的に強く、オーストラリア、シンガポールの順に続いている。

まとめ

今回はcento venturesが公表してくれたレポートを見てきたが、いかがだっただろうか。個人的には、これまで見てきたデータと異なる視点のデータが含まれていて、非常に助かった!

  • 2018年の東南アジアにおけるテック投資は、$11B(1兆2,000億円)で前年の倍近くに大幅増加
  • スタートアップの成長と共に、$5M(≒5.5億円)以上の投資案件が増加の一方、$5M以下が減少
  • 平均投資額は、Pre-Aが$0.4M、シリーズAが$3.2M、シリーズBが$11.6Mと2015年以降で大きく変化無し
  • インドネシアとシンガポールに投資が集中する一方、ベトナムへの投資総額も増加傾向
  • Exitは主にM&Aとセカンダリー・セールス
  • M&Aの買い手では、件数ベースで日本が第二位。金額ベースでは中国が圧倒的にトップ

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