ここ香港を含むアジアでは、今週は旧正月。カレンダー暦の年末年始は殆ど祝日が無かった分、連休だ。僕は、仕事を兼ねてシンガポールとマレーシアのペナン島にを訪問した。中国人観光客の多さに圧倒された一方、特にペナン島はアジアらしい混沌とプラナカンの優雅な文化が入り混じった、素敵な場所だった。
今回は、タイで最大(唯一?)のスタートアップ・イベントを開催しているTechsauceが出した、タイのスタートアップに関するレポートの要約を書いていきたい。タイは今後スタートアップ・VCの市場が整備されて伸びてくると予想できるので、要チェックだ。
タイの基本情報
タイでは、6,900万人の人口に対して、インターネットの普及率が82%と比較的高い。一方、4Gは30%と、インターネットのスピードや質は、先進国と比較するとまだまだ劣る状況だ。
スタートアップへの投資総額はまだまだ僅か
2018年における、タイのスタートアップへの投資総額は、僅か$61.25M(≒66億円)だ。これは、東南アジア全体に展開しているファッションEコマースのZilingo等を含んでいない数値だろう。にせよ、金額が小さい。逆に言うと、単純に人口規模を考えても、大きな伸びしろがあるということだろう。
分野で面白いのは、Food/Bio/Restaurantが最も多いこと。日本を含めて、アジアではまだまだ数が少ない食品関連スタートアップについて、タイは注目すべきマーケットかもしれない。
スタートアップへの投資総額推移
タイのスタートアップへの投資総額と件数の推移を見ると、2013年から徐々に投資が始まっている。
件数では僅かに増えたものの、投資総額は、2017年から2018年にかけて減っているのが分かる。これは、下の図を見る限り、2017年にやや大型の資金調達が集中したからだろう。特に、E-commerce enablerのaCommerceの$65M(≒70億円)が効いている。
ちなみにomiseは日本人創業者の決済スタートアップ、POMELOはファッションのEコマース・スタートアップだ。
タイのスタートアップに張っている投資家
投資家の数は、2012年と比較すると、劇的に年々増えている。
投資家を見てみると、世界中で地域毎にファンド組成している500、タイのCVCであるAddVentures・beacon VC・Digital Ventures・InVent、シンガポールから東南アジアを見ているGolden Gate・jungle・Monk’s Hill、そして日系ではCyberAgent・eastVentures・IMJ(Spiral)・KK等が並ぶ。
投資ステージ:シードとシリーズAが大半
スタートアップへの投資ステージを見ると、シードとシリーズAが全体の75%を占める。一方、シリーズBも9%あり、今後競争に勝ち残ったスタートアップが成長していくに連れて、シリーズB以降の割合も増えていくだろう。
スタートアップへのM&A
タイにおけるスタートアップのExitは、ほぼ全てM&Aによるものだろう。近年あったM&Aを見ると、GMOやLINE等、日系も奮闘している。ちなみに、LINEは、日本国外でタイが唯一/最も上手く行っている市場という理解だ。食品デリバリーのサービスも手掛けていて、裏でサービスを回しているのは、香港発のとあるロジスティクス・スタートアップのようだ。
まとめ
タイのスタートアップ環境について、Techsauceのレポートを元に纏めてみたが、いかがだっただろうか。
- タイは人口6,900万人で、インターネット普及率が82%
- 2018年のタイ・スタートアップへの投資総額は僅か$61M(≒66億円)程度で、今後の伸びしろが大きい
- 注目すべき分野の一つとしては、Food/Bioが挙げられる
- 投資ステージは、シードとシリーズAで全体の75%を占める
- 現在まで、スタートアップのExitはM&Aが殆ど全てで、LINE等日系企業も買い手として奮闘
タイはこれまで成長が限定的で、これから本格的に伸びていくと予想されるため、インドネシア等と異なりこれから入っていっても遅くない市場だろう。一方、タクシン派からタイ王女が大統領へ立候補することを国王が反対するニュースが丁度あったが、不安定な政治が大きなリスクなのは間違えないだろう。