この2週間で中国内陸部とシンガポールへ行ってきた。中国では会社の投資先訪問をしたのだが、アルコール度数50%を超えるもはや酒というよりガソリンのような味がする白酒を、3日で3度の食事(ランチも含む)で飲むという洗礼を受けた。
ホスト一人一人がゲスト一人一人を回り、ゲストが3杯ショットしてホストが1杯飲む。これが全てのホストが終わるまで延々と続く。多分この出張中に軽くボトルの半分は飲んだだろう。酌み交わすことが信頼につながる、あるいは飲まないとホストに対して失礼に当たると言われ、顔をしかめながら何とか乗り切った。
相手方の総経理は60歳超のおじさんだったのだが、英語が話せる彼の娘さん曰く糖尿病にかかってしまったらしい。こんな感じの接待を政府の高官や取引先と毎晩繰り返せばそりゃあ病気になりますわw。僕は初回は頑張ったものの、2-3回目はホテルに帰ってから強制的に吐くことで、何とか翌日も頭を働かせて踏ん張りきれたが、相応に身体にダメージがあった気がする。内臓に。。。
普段は飲むといっても、ハッピーアワーで起業家や投資家の友人と1-2杯ビールやハイボールを軽く飲んで色々話す感じなので、今回の白酒祭りはかなり新鮮だった。一方、さすがにスタートアップ界隈は違うと思うが、中国でビジネスをしていく難しさも感じたw。
ちなみに、僕が今回訪問したのは中国のティア3の街。ティア3と言っても人口が5百万弱いる街で、中心街は大勢の人がいた。調べてみると、ティア1は、北京・上海・深セン・広州の僅か4都市だが、新ティア1が15、ティア2が30、そしてティア3が70もある。あらためて中国が抱える人口の多さ・スケールの大きさを感じた。
さて、今回は海外、特に香港で起業する場合のメリットやデメリットを書いてみたい。
僕は投資先も含めて香港やシンガポールを本社としている起業家と会うことが多いが、特に香港については「香港に拠点を置いて何が良いのだっけ?」という会話になることが多い。
というのも、香港は先ずVC等スタートアップへ投資する投資家が少ない。従って、殆どの香港のスタートアップは香港拠点の投資家に加えて、シンガポールや中国本土拠点の投資家とコンタクトして資金調達を行う。投資家がわざわざ出張してオフィスに来て自分に会いに来てくれれば良いが、全ての投資家がそうするわけでもないので、結局自分が現地に赴く必要も出てくる。すると、投資家訪問のために時間とコストがかかってしまう。
加えて、香港ではエンジニアが質や経験に対して費用が高いため、リモートでエンジニアを抱えるスタートアップは多い。深センやオーストラリア、ベトナム更にはネパール等多岐に渡るが、基本的にCTOの出身地や所在地に拠っている気がする。
最後に、香港自体は人口700万人超の小国(正確には中国の特別行政区)で自国マーケットのサイズが限られるため、東南アジア・オーストラリア・中国本土を中心に多国籍展開が必須となる。そうなると、大きなマーケットに最初から拠点をどんと構えてそこから始めれば良いのでは?となるのは普通だろう。
一方で、香港は法人税や所得税が低いことに加えて、シンガポールを除く他東南アジアを比較すると圧倒的に法制度が整っていて、通貨も米ドルにペッグされているのでボラティリティリスクが無い。投資するのも仮にExitしてお金をその国から出すのも、東南アジアであれば国によっては規制がかかっている。そのため、投資先エンティティがシンガポールや香港、ケイマンやヴァージン諸島に無いと、投資できないVCもある。東京には飛行機で4時間あれば行けるし、他東南アジアや中国の主要都市にも4時間以内位で大体行ける。従って、アジアの複数国にて事業を行う上で、移動の面からもハブとして便利な立地である。
先ずデメリットからバーっと書いてしまったので印象は悪いかもしれないがw、アジアの複数国で事業展開をするつもりならば、香港かシンガポールで起業するのが良いと思う。シンガポールは香港よりも政府のサポートがもう少し厚く投資家の数も多いが、税金面や他アジア諸国へ移動する場合のハブ機能、法制度の整い具合など、アジアにおける国際都市としての役割や特徴は香港と似ている。敢えて言えば、香港は中国、シンガポールはよりインドの色が強い気がする。どちらもアジアにおける巨大マーケットだ。
インドネシアは自国マーケットが大きいので少し様相が異なるが、例えばマレーシアやタイで事業を始めたものの、事業が他複数国でグロースするに連れてシンガポールに本社を移すスタートアップは多い。ちなみに、今回シンガポール出張時に会った、個人での初投資先はベトナムで創業した後、グロースしてアジアの複数国で事業展開する中でシンガポールに本社拠点を移している。
この数ヶ月で、日本人による日本国外での起業相談が増えてきた。僕は香港拠点でアジアにて活動しているため、普段は日本人起業家と関わる機会は限定的なのだが、日本人で海外で起業を考えている人がいれば少しでもサポートできるように、自分の実力や経験値をもっと高めていければと思う。