ソフトバンク ビジョンファンドが投資するアジアのユニコーン一覧(後編)

今回は、前回の続きで、ビジョンファンドが投資するインドや東南アジアの会社を見ていこうと思う。

余談になるが、昨日とあるスタートアップで要職に就いていた友人とばったり会い、話していたところ「会社の資金が底をついてしまい、この前やむなく会社を辞めたんだ。」と切り出された。。。スタートアップは生きるか死ぬか、ぎりぎりの勝負の世界で、競争が厳しいことはよーく分かっていたつもりだが、自分の知り合いの会社が潰れたことを聞き、正直ショックだった。。。その会社は数年前に数億円を調達していて、これから拡大する予定だったのに。。。

改めて厳しい世界に身を置いていることを痛感したと共に、自分の投資先は何が何でも生き残れるように全力でサポートすることを再度思った。

さて、それでは本題に戻して、ビジョンファンドの投資先を見ていこう!

インドの投資先5社

firstcry

ベビー・子供用品やおもちゃのEコマース会社。2,000を超えるブランドの商品を扱い、オンラインで独占的な地位を築いているだけでなく、インド全域に180近い実店舗も運営している。

ついこの間だが、報道によると、ビジョンファンドが計$400M(≒440億円)をバリュエーション$1B近く(≒1,100億円)で実施したとのこと。他株主には、東南アジアでプレゼンスのあるシンガポール政府系のVertexや、元はソフトバンクが始めたSAIF Partners、他にもIDGやNEA等が名を連ねる。

Paytm

Paytmは、最近日本でも様々なキャンペーンが行われて知名度が格段に上がったQRコード支払いの会社だ。だが、それはPaytmの一面に過ぎない。PaytmはPaytm MallというEコマースサイトも運営している。更に、Paytm Payments Bankというデジタル銀行も手掛けている。AlibabaはEコマースから始まり、QRコード支払い、デジタル銀行の順で手掛けていったが、PaytmはQRコードから始まり、Eコマース、デジタル銀行と手掛けている点が興味深い。

ビジョンファンドは、正確にはPaytmではなく、その親会社のOne97 Communicationsへ投資している。他にも、Alibabaに加えて、オマハの賢人と呼ばれるあのバフェット率いるBerkshire Hathawayも投資済だ。

OYO

日本への進出も発表した低予算ホテルを提供するOYO。正確に言うと、フランチャイズ方式でホテル運営のシステムやノウハウを提供し、その対価としてフィーを徴収することで、建物や土地への大規模な投資無しでスケールできるビジネスだ。

インドでは230都市・8,500超のホテルチェーンを築き、中国やイギリス、更にインドネシアやマレーシア、ドバイ等にも進出するようだ。設立が2013年だから、僅か5年超余りでかなり高速でスケールしている。

ソフトバンクに加えて、セコイアやLightspeedといったアメリカのトップVCのインド現地チームや、ソフトバンクの投資先であるDiDiやGrabも投資をしている。DiDiやGrabのアプリ上でOYOのホテルが予約できるようになるのかもしれない。

Policybazaar

自社ブランドで生命保険・健康保険・自動車保険などを提供すると同時に、クレジットカードや主に個人向けの銀行融資、投資商品の比較サイトであるpaisa bazaarを運営するのが、Policybazaarだ。記事によると、年間を通して1億人のトラフィックがあり、月当たり30万件の取引が成立しているとのこと。

これまで$347M(≒385億円)を調達していて、初期投資家には比較的長い歴史を持つ米IntelのCVCであるIntel Capital、レーター・ステージではビジョンファンドに加えて、Tiger GlobalやWellington、シンガポール政府系のTemasekが投資に参加している。

Grofers

オンラインのスーパーマーケット(Eコマース)を運営するGrofers。この分野は、Alibabaなどから出資を受けているBigBasketのプレゼンスも大きい上に、ビジョンファンドの以前の投資先でWalmartが買収したFlipkartや、Amazon Indiaが参入してくる見込みで、競争が激化するだろう。

直近のシリーズEはダウン・ラウンド(その前の資金調達よりバリュエーションが落ちること)だったようで、思ったようにスケールできていないのだろう。これまで$242M(≒268億円)を調達していて、ビジョンファンドの他、セコイア、Tiger Global、DST Globalを設立したロシアのビリオネアであるYuri Milner等が投資家に入っている。

東南アジアの投資先2社

Tokopedia

インドネシアでNo1のEコマースであるTokopedia。東南アジアでEコマース3強の一角を占めるLazadaやShopeeと異なり、インドネシア市場のみにフォーカスしている。これまでの実体のある商品に加えて、チケットや割引券等のデジタル商品も取り扱い始めたようだ。

他Eコマース会社も手掛け始めているが、Eコマース周辺の事業、例えば物流やペイメント、出店する顧客へのローン等も始めている。

ビジョンファンドに限らず、日系企業が投資家として入っている。インドネシアのVC業界で絶対的な地位を築いたEast Ventures、サイバー・エージェントのCVC、Beenos等が初期の投資家だ。レートステージでは、Alibabaも巨額の資金を投入していて、これまで$2.4B(≒2,650億円)を調達済だ。

Grab

マレーシアで創業し、現在はシンガポールを本社に運営されている、ライドシェアのGrab。ただ、もはやライドシェアに留まらず、フード・デリバリー、QRコード支払い、アプリを使用している中小企業向けの融資等、様々な事業を展開している。シンガポールやマレーシアでは必須のアプリだ。

初期は日系を含む様々なVCが投資していたが、ここ最近のレートステージでは、トヨタやヤマハ、東京センチュリーなども投資している。他の事業会社では、マイクロソフトや韓国ヒュンダイ自動車、旅行予約サイトBooking.comの運営会社等が投資していて、累計$7.3B(≒8,000億円)もの資金を調達している。

その他の投資先 韓国1社

Coupang

韓国最大のEコマースを運営するCoupang。他巨大Eコマースと同様、ホームページを見ると何でも売っている印象だw 

これまで$3.4B(≒3,800億円)を調達しており、初期投資家には、シリコンバレーを拠点に韓国系のジェネラル・パートナーが運営しているAltos VenturesやセコイアといったVC、レートステージにはWellingtonやBlackRockなど機関投資家が入っている。

まとめ

今回は、ビジョンファンドのインドや東南アジア、韓国の投資先を見てきたが、いかがだっただろうか。

  • 投資先8社中5社が、Eコマースを手掛ける企業。
  • 他2社はプラットフォーム事業で、印OYOのみホテル関連(但し、AIなどを使ったテクノロジー企業)。
  • インドや東南アジアは、今後5-10年でマーケットが大きく伸びていくので、そこで勝ち残ったテクノロジー企業への投資が増えていくと予想。

ビジョンファンドの投資先を見てみると、Eコマースを始めとするプラットフォーム事業を運営する会社が多く、そこで得られる独自のデータをAIで分析し、新たな事業を築いていく構想が分かる。AIによるデータの利用は、徐々にそのビジネスモデルが出来つつあるが、まだ発展途上の分野だと思う。従って、ビジョンファンドの投資先あるいは投資先同士が協業して、今後どんな事業を展開していくのか、注目していきたいと思う。

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