今回は、当社CFOで創業者娘がカナダで逮捕されたニュースが大きく報道されている、中国Huaweiを見ていこう。Huaweiと言うと、携帯電話メーカーのイメージが強いが、それが収益の柱ではないのだ。
Huaweiとは
Huaweiは、1987年に中国の人民解放軍出身の任氏によって創業された。現在は深センに本社を置いており、テンセントと共に深センに拠点を置く中国を代表する企業の一つだ。
従業員は全世界に約18万人。超巨大企業。ちなみに、未上場企業だ。
会社の仕組みがユニークなことでも知られており、CEOは3名が半年毎に変わっていく「輪番制」や、従業員8万人超が利用している従業員持株制度を取り入れている。
Huaweiが行う4つの事業
続いて、事業内容を見てみよう。
携帯電話のイメージが強いが、それはあくまでHuaweiの事業の一部である。Huaweiには、現在4つの事業がある。かなり幅広い事業を手掛けているが、事業を超えたキーワードを挙げると、クラウド、IoT、AI、そして5Gだろう。
通信事業者向けネットワーク事業
Huawei製基地局の置き換えを発表したソフトバンク等、通信事業者を顧客として事業展開をしている。
具体的には、無線ネットワーク・固定ネットワーク・クラウドコアネットワーク・ITインフラ関連の製品を販売だ。
法人向けICTソリューション事業
政府や公益事業、金融、エネルギー、運輸から製造等、多岐に渡る法人に対して、ビッグデータやAI分野の技術を駆使して、インフラのプラットフォームを提供している。
具体的には、ルーター・ストレージ・サーバー・テレプレゼンス/ビデオ会議端末等の製品販売や、クラウドコンピューティングのソリューション等を提供している。かなり幅広い。
消費者向け端末事業
世間的に最も知られている携帯電話を含む、消費者向け事業。2017年には1億5,300万台のスマホを出荷し、世界市場シェアの10%以上を占めている。AppleやSamsungも含めた世界3大携帯電話メーカーである。
携帯電話の他、タブレット、ノートパソコン、スマートウォッチ等ウェアラブルも扱っている。
クラウド事業
アマゾンAWSに対抗してGoogleが攻勢をかけているが、Huaweiも2017年にクラウド事業を新設した。E-Commerceやコネクテッドカー、IoT等クラウドのニーズが1事業を設立するほど大きくなる見込みがあるということだろう。
上記の通信や携帯電話の販売事業では、既に世界のトップに食い込む規模に達しているが、おそらくこのクラウド事業も、既存の顧客網や既存事業を生かして、攻勢をかけてくるものと思われる。
財務情報
事業別の売上高
上からの流れで、先ずは事業毎の売上構成を見てみよう。
売上高の半分ほどを占めるのは、携帯電話事業ではなく、通信事業者向けネットワーク事業だ。携帯電話事業は40%ほどである。
一方、成長度が高いのは携帯電話事業と、全体の9%を占める法人向けICTソリューション事業だ。通信事業者向け事業は、対前年比で3%程度の伸びに留まっている。
地域別売上高
地域別では、中国での売上が半分ほどを占める。27%はヨーロッパ・中東・アフリカで、12%がアジアだ。今問題になっているアメリカを含む南北アメリカは、実は7%しかない。
成長性で見ると、中国が対前年比で約30%と高い伸びを示しており、アジアも10%伸びている。一方、南北アメリカは10%減少している。
財務ハイライト
過去5年の財務ハイライトをざっと見ていこう。
先ず、売上高が年平均で26%と、非常に高い成長を誇っており、2017年度には約10兆円(!)に達している。
営業利益率は毎年低下しているものの、依然として9%以上を維持しており、高い。
多くの中国企業が借入過多によって厳しい状況に陥っているが、Huaweiは、借入残高が営業利益よりも低く、全く問題ない規模で借入を行っている。
研究開発投資
Huaweiで一つ特徴的なのは、その研究開発投資だろう。売上高の約15%を投資しており、販管費とほぼ同じレベルだ。
これまで7万以上の特許を取得しており、2016年の国際特許取得数では、同じく深センに本社を置く通信設備・端末会社のZTEに続いて、世界第2位だ。ちなみに、日本の三菱が4位でソニーは10位にランクインしている。
株主
Huaweiは、従業員持株制度を導入している。2017年末現在、80,818名の従業員がHuawei株を持っており、これが98.6%もある。創業者の任氏が保有するのは、僅か1.4%ほどだ。
外部投資家から大規模な資金調達をしていたり、上場企業でもない会社の株式を、こうして従業員が持ち合うというのは、かなり特殊な事例だと思う。
まとめ
今回は、アメリカが国家安全保障を理由に締め出しを行い、創業者娘がカナダで逮捕されたHuaweiを見てきたが、いかがだっただろうか。
- Huaweiは、売上高10兆円を誇る超巨大な未上場企業
- 携帯電話事業は40%程度で、通信事業者向け事業が売上高の半分を占める
- 問題が起きている(南北)アメリカは、僅か11%程度。中国が半分、ヨーロッパ・中東・アフリカが27%を占める
- CEOは、3名が半年毎に変わる輪番制
- 研究開発費に売上の15%程度を毎年投資
- 2016年の国際特許取得数は、世界第2位
- 会社株式の98.6%は従業員持株制度を通じて保有
政治的な理由で不本意な形で世界から注目を浴びてしまったが、会社の業績は超優良だ。中国が世界に誇るグローバル企業として、今後どのように更なる成長を遂げるのか見ていきたい。