気が付けば今年ももう師走。
香港では、中文大学やPolyUに過激なデモ隊であった高校生や大学生が立て籠もり、2週間ほどひどい状況が続いた。
これまで道路で機動的に行っていたデモが、大学に籠ったことで自らの逃げ道を無くしてしまい、警官に包囲された末の一斉逮捕に繋がった。トランプが香港人権法案にサインして以来、またデモが再開されたが、今のところ比較的平和的だ。
逮捕者は現在のところ6,000人近くに上っている。PolyUだけで1,100人近くが逮捕されたようだ。デモ隊の中でも道路を封鎖したり警官と対峙していた過激派は、その多くが高校生や大学生で、その多くが逮捕されたのではないだろうか。
香港におけるスタートアップの資金調達
さて、今回は香港に拠点を置く主なベンチャーキャピタルを紹介しようと思う。
香港にはベンチャーキャピタルが少ない。東南アジアを見るならシンガポール、中国を見るなら北京や上海、深センに多くのVCが拠点を置くためで、香港はそのちょうど狭間にある。
従って、香港のスタートアップは特にシリーズAからC位までの資金調達は苦労する場合が多い。
シードは個人で投資するエンジェルや小さいVCが投資できるサイズである一方、シリーズC まで行けば事業が相応に大きくなっていて、戦略的に投資する企業が増えてくるからだ。
僕はこれまで、シードからプレBラウンドの間で幾つか投資をしていて、これらのスタートアップ達がいずれも現在資金調達中だ。
その中で香港のスタートアップは2つあり、どちらも香港に留まらず、シンガポールや他都市ベースの投資家にアプローチしている。
香港自体は人口700万人超の一都市に過ぎず、事業をスケールさせていく場合、東南アジアやオーストラリア、中国等に展開する必要がある。従って、そこをカバーしているVCにアプローチするのは理に適っている。
というのも理由の一つだが、最も大きいのは香港だけだと目標としている資金が集まらないケースが多いからだ。
そんな香港を拠点に活動する数少ないVCの幾つかを紹介してみたい。
香港拠点の主なベンチャーキャピタル(VC)
Horizons Ventures
「香港の超人」と呼ばれる李嘉誠(リカシン)のVC。正確には、李嘉誠のお金や彼を前面に出しつつ、ファンドの運営は女性2名で行っているはずだ。
古いところでは、FacebookやSpotify、Waze、やや新しいところでは代替肉のImpossible FoodsやドイツのチャレンジャーバンクN26、今年上場したZoomやSlack等々、多くのユニコーン企業へ投資している。
地域ではアメリカが主で、一部ヨーロッパ、アジアは殆ど無いはずだ。ちなみに、直近では日本の宇宙関連ベンチャーに投資したりもしている。
拠点は香港だが、投資先はアメリカやヨーロッパなどほぼ香港外。領域は主にディープテック等で、投資ステージはシリーズA以降が多いイメージだ。
投資先と投資ステージを見る限り、おそらく世界でも指寄りのVCではないだろうか。
ちなみに各VCの成績、つまりリターンは、年金基金等の公的な機関投資家から資金を調達するVC分は、それらの機関投資家が公表する場合はある。が、個人やファミリーオフィスから資金調達するVCは、情報がリークしない限り基本的には謎である。
Horizonsも、規模は合わせて数百億円〜千億円にも上るのだろうが、基本的にリカシンのポケットマネーを運用しているので、その成績はよく分からない。
Mindworks
香港を中心とした中華圏に投資しているVC。アメリカ西海岸で著名なVCである父を持つDavidが始めたファンド。
看板案件は、香港が誇るユニコーン・スタートアップであるLa La Move。シリーズAからダブルダウンで直近のシリーズDまで投資しているはずだ。
香港拠点で香港のスタートアップに投資する代表格のVCだが、中国や台湾に加えて、直近ではシンガポールベースの東南アジアフォーカスのグロースステージのスタートアップにも投資をしている。
投資ステージはシードからシリーズB/Cまで幅広く、投資領域もEコマース、ロジスティクスからフィンテック、トラベルと幅広い。
Vectr Ventures
自らをベンチャースタジオと呼んでいる。単なる投資家というより、投資に加えてオペレーショナルなサポートを通常のVCより手厚くしているイメージだろう。
外部からお金は調達していなく、ファミリーオフィスのはずだ。
僕の知識が不足していることもあるが、看板案件と言える投資案件はない気がする。
投資領域は幅広く、投資ステージはシードからシリーズA/Bくらいまでか。
Beyond Ventures
現在そして今後VC投資の主要テーマになるだろうディープテックに投資している印象があるファンドで、看板案件に以前本ブログでも紹介したSensetimeやInsight Roboticsなどがある。
Mindworksと同様、政府がマッチング投資してくれるファンドに選ばれている。
マッチング投資とは、選ばれたVCが1投資した場合、政府がそれにマッチさせて1投資する仕組み。成功報酬の取り方がVC寄りになっているので、VCとしては1の資金で2投資可能な良いプログラムだ。シンガポールでも同様の仕組みがあるだろう。
ソフトバンクも投資!AI スタートアップのSensetimeが凄い
C Ventures
李嘉誠率いる長江グループらと共に、香港経済を牛耳る不動産ジャイアントのNew World(新世界)グループのCVC。
創業者の孫世代に当たるハーバード学部卒のAdrianが作ったファンドで、C VenturesのCは彼らファミリーの苗字であるChengに因んでいると思われるw
投資領域はファッションやメディア関連が多く、地域も香港というより欧米が多い印象。投資ステージもシードではなく、シリーズA以降が対象だろう。
Alibaba Entrepreneurs Fund
アリババが香港と台湾のスタートアップへ投資することを目的に設立したファンド。投資のオペレーションは中国の主要VCの一つであるGobi Partnersが担っている。
香港では、GoGoVanやCompareAsia、WeLabなど香港を代表するスタートアップにも投資している。シードからシリーズCまで幅広く投資している印象だ。
JUMPSTARTERというスタートアップ向けのイベントを毎年開催していて、そちらの方が知られているかもしれない。
Arbor Ventures
女性2人が創業者のフィンテックのスタートアップに特化したファンド。
こちらもHorizonsと似ていて、香港に拠点はあるがアメリカや中国等、香港外を中心に投資している。
日本でも一部投資しているし、直近では東南アジアでも投資を始めているファンドだ。
まとめ
主にはこんなところだろうか。
香港VCの特徴として、数が少ないw、ファミリーオフィス系が多い、香港外への投資が多いのが挙げられるかもしれない。
元々東南アジアと中国の狭間にある上に、このデモで小売りや観光などを中心として経済減速が起きていたりと、逆風が吹いている状態だが、良いスタートアップがちらほらある香港。僕も複数社へ投資しているので、彼らと共に業界を盛り上げていければと思う。