コロナショックで世界が文字通り「様変わり」してから、およそ2ヶ月。
2月半ばに書いた前回記事では、僕は夏場までにおおむね事態は収束すると予想していた。が、専門家の方の意見を聞く限り、長期戦になりそうな模様だ。
僕がMBAを含め4年間過ごしたニューヨークは、凄まじいことになっている。妻の親戚や多くの友人がニューヨークやコネチカットに多く住んでいるので心配だ。ピークは超えたようだが、まだまだ予断を許さない状況だろう。
翻って、日本は今のところ、爆発的な感染拡大は抑えられているようで、一安心だ。
マスク着用、手洗いうがい、毎日の風呂、ハグや握手をしないこと、など欧米と異なる生活習慣が効いてるのではないか。今後、欧米の生活習慣がこちらに寄ってくるかもしれない。
さて、今回は香港の現状を書いてみようと思う。香港はおそらく(今のところ)世界で最もコロナを抑え込めている国(特別行政自治区)だろう。
今の香港の様子や対策は、今後ピークアウトし治療薬やワクチン開発を経て感染を相当抑え込めるまでの、日本におけるWithコロナの風景を想像するのに、少しは参考になるかもしれないと思ったのだ。
香港のコロナ感染者数と死者数の推移
現状理解として、香港のコロナ感染者数と死者数の推移を見てみよう。
1月に感染者が出始め、2月に新規感染者が出ても10名以下、出ない日もあった。
1月の時点で既に、街中ではマスクを付ける人が結構いた。2003年のSARSを経験したからで、地元の人は感染症に対して意識が高いと思った。マスクを付けていないのは、大抵欧米からの駐在者という印象だ。
2月の後半になるまで、テレワークに切り替える企業も多く、2-3週間は街が閑散としていた。おそらく今の日本がこんな感じなのではないだろうか?
そこから3月半ばにかけて、大きく感染者が増えることなく善戦していたのだが、状況が変わったのは3月15日だ。
政府が、「3月19日からアメリカやイギリスから帰ってくる者は2週間強制隔離」を発表し、隔離が始まるまでの間に、一斉に学生やビジネスマン(僕のボスも含みますw)が一斉に帰国したのだ。
このタイミングで米英からコロナが香港に持ち込まれ、3月20日から一気に新規感染者数が増えた。
帰国者の中に感染者が多くいたのと、そこから市中感染が起きたからだ。ジムやバーがクラスターになったとの報道もあった。
その後、政府が日毎に状況に応じて更に厳しい対策を取ったことが効いたこともあり、この5日間、4月26日から4月30日までは新規感染者がゼロになっている状況だ。
今日現在では、こんな状況だ。8割の感染者が回復し、死者は僅か4名に抑えられている。
香港のコロナ感染状況
- 感染者数:1040名
- 回復者数:859名
- 死者:4名
- 人口100万人当たりの死者数:0.5名
ちなみに、人口100万人当たりの死者数で比較すると、日本は3.46名、アメリカは187.5名のはずだ。
香港のコロナ対策
では、香港は具体的にどういった対策を実施したのだろうか。
先ず、外国からの入国者に対する対策を見てみよう。
外国からの入国者に対する対策
- 香港居住者でない場合は、入国拒否。
- 但し、中国本土・台湾・マカオからの訪問者は、14日以内に外国訪問がなければ、強制隔離を条件に入国可。
- 香港居住者は、14日間強制隔離。
外国からの入国者に対する対策で、香港が他国と比べて違う点を挙げるとすると、リストバンドでの監視だろう。
入国者は、先ず空港から隣駅の大きなスタジアムへ移動し、そこでPCRを受けている。そして、帰国後の1泊は、政府指定の市中ホテルへ泊まり、そこからは自宅で14日間の隔離に入る。
おそらくGPS付きのリストバンド着用が義務で、14日間の自主隔離を破ると、逮捕だ。
罰則は、罰金が2万5千香港ドル (≒34万円)と6ヶ月の刑務所行きである。なかなか重い。
現に逮捕者は出ている。「リストバンドを付けた人がレストランで食事していたところ、他の客に通報された。」というニュースもあったくらいだ。壁に耳あり障子に目あり。甘く見ない方が良い。
真偽は確かめられていないが、「リストバンドは元々デモ対策用に準備していた。」と聞いた。そこでたまたまコロナショックが起こり、隔離者の管理に使っているとのことだ。
たまたまラッキーパンチが当たって良かったと政府は少し安心しているのではないかw しかし、コロナがコントロールできてきた今、再度デモが復活してきているのだが。。。
話を戻して、次は市中対策を見てみよう。
日本と違って、これらは強制力を持つため、破ると罰則が課される。ところどころ警察が巡回して、様子を逐次モニタリングしている。
監視されていると堅苦しさを感じる人もいるかもしれないが、今はルールを遵守して感染拡大を抑えてほしい我が身としては、どんどん違反者を見つけていっても良いのでは?と思っている。
火炎瓶を投げてくるデモ隊と戦うよりやりやすい仕事のはずだw
現在の香港の様子
こういった対策が取られて感染がほぼ収まった現在、香港における日常の様子はどんな感じなのだろうか。
僕自身や周りを見る限り、こんな感じだ。
仕事の様子
- 教育関連・バー・マッサージ・政府関係者などは、リモートか休業中。それ以外は、オフィスへ出社。
- 以前より圧倒的に頻度は低いが、対面のミーティングも徐々に再開。ただし、マスク着用かソーシャルディスタンスを取りながら。
- 海外出張はストップ。社内では感染が抑えられている国であれば、6月終わりを目処に徐々に再開の予定。
- 海外とのミーティングや取締役会は、全て電話会議又はZoomなどでビデオ会議。
- オフィス内では基本的にマスク着用。
- ランチもテイクアウトで、一人でデスクで済ます。
日常生活の様子
- ジムが閉まっているので、ランニングやハイキング人口が急増。マスク着用はマチマチ。
- 週末の公園は以前の2倍くらいに混雑。
- バーは閉鎖。レストランは概ね営業。
- レストランは相応に賑わっている。但し、テーブル数が元の半分程度か。
- 地下鉄・バス・タクシーなど公共交通の利用は、ほぼ回復。
- マスクやトイレットペーパー・ハンドソープが3月に2週間程度不足したが、現在は回復。
僕自身の不満としては、「ジムで筋トレできない」「人と会って食事や飲んだりする気にならない」「犬の散歩道が以前より混んだ」とか不満はあるが、大したものではないかもしれないw
逆に、香港では「大気汚染が大幅に改善され、空気が澄んでスモッグが薄くなった」という大きなメリットもある。犬の散歩中に、時々人がいないところでマスクを取ると、空気が妙に美味しく感じられる。こんなことは、コロナ前はなかった。
Zoomで話すことが急速に広がったこともあり、それこそ5年ぶりにMBAの日本人同期皆とキャッチアップできたのも、おそらくコロナが無ければ実現しなかっただろう。ヨーロッパ、アジア、アメリカまで時差も大きくバラバラに滞在しているからだ。
なので、「コロナショックは決してマイナスだけではない」というのが、正直なところだ。
最後に
現在の香港は、しばらく続くと思われるWithコロナの日常に限りなく近いと思う。
マスク着用を含めて握手やハグなど挨拶の仕方はもちろん、他人との距離の取り方、コミュニケーションにおけるオンラインの割合の高まり、海外出張・旅行への制限など、変化は少なくない。
僕自身も、楽しみにしていた大事なイベントが延期せざるを得なくなる等、マイナス面はもちろんある。が、空気が澄んだとか余分なことが無くなって取り組んでたことに時間をたっぷりかけられる等、プラス面も実は多い。
結局捉え方次第、変化に対応できた者が生き残っていくのが真理だと思うので、この機会を積極的に生かしていく次第だ。
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