今日はAwayというスタートアップを分析しよう。以前ペットフードを販売するOllieについて書いたが、それと同様、AwayもMBA時代のクラスメートが起ち上げた会社だ。現在アメリカで最も注目されているスタートアップの一つだろう。
先月末の日経産業新聞にAwayの記事が掲載されていたことからもそれが分かる。日本のマスコミにも取り上げられるほど人気があるということだ。ただ、記事に書かれているAwayの強みについては、僕と意見が異なるので、下記で詳しく述べていきたい。
Awayとは
先ず、Awayがどういう会社なのか簡単に見ていこう。
Ollieと同様、主にDTC(Direct to consumer。顧客に直接届けるという意味。)で販売を行っている。売っているのはスーツケースだ。機内持ち込みできるサイズを$225ドル(=約2万5千円)、大きなサイズを$295ドル(=約3万3千円)の価格で販売している。
DTCと書いたが、オンラインでしばらく販売した後に、ニューヨークやロンドン等に実店舗を出している。主にブランドイメージを伝えることや、顧客とのエンゲージメントを高めること、オンラインでは取れないデータを取ることが理由だと思う。
記事によると、創業から2年半で50万個を売り上げ、2016年度に売上1,200万ドル(=約13億円)を達成したとのこと。しかも黒字だ。創業が2015年であることを考えると、成長が凄まじい。
これまで合計で81百万ドル(=約91億円)を調達していて、Accel等アメリカのトップVCも含まれている。加えて、ビクトリア・シークレットのモデルであるカーリー・クロスやラッパーのJay Zも投資していたりする。Away側からすると、共同でキャンペーンに参加してもらったり、マーケティングの観点が強いだろう。日本ではサッカーの本田圭祐さん等がVC投資を始めているが、彼らが投資したというニュースが世に公表されるだけで、特にto Cのビジネスには大きな宣伝効果がある。
余談だが、カーリー・クロスは、イヴァンカ・トランプの夫の弟であるジョシュア・クシュナーと先日結婚した。ジョシュアはThrive Capitalというベンチャー・キャピタルやOscarという保険スタートアップを創業している。MBA時代に授業に来て講演を聞いたこともあるが、スマートで長身且つイケメンだった笑
他に資金調達について触れておくとすれば、Awayがプロダクトがないシードの段階でAccel等から資金を調達したことだろう。創業者2人はWarby ParkerというDTCの先駆けであるスタートアップでの経験があるとは言え、事業の構想だけでトップVCから資金調達したのは凄いと思った記憶がある。
それでは、ここから何故Awayが大きく成長できているのか、分析していこう。
スーツケースという絶妙の商材をDTCで販売
今やDTCで販売されているものは多岐に渡るが、スーツケースを始めのプロダクトとして選択したのは絶妙だと思う。
先ず単価が高いこと。洋服等と比較しても高い商材で、マージンを取りやすい。
次に、返品が少ないだろうこと。DTCを含むE commerce事業は、返品の費用が高くつく。その輸送費用や製品の代金(修理費等を含む)がかかるからだ。例えば洋服や靴であれば、サイズが合わないことを理由に返品されることが多い。だが、スーツケースは、サイズが合わないことがないので、返品率が低く、それに伴う費用も低く抑えられているのだと思う。
サイズ等商品の種類を少なくできるのも大きい。これによって、提携している製造工場への交渉(価格も含む)がしやすくなる。
商品の価格に対する質の高さ
僕は今から3年ほど前に、実際にAwayのスーツケースを買って使っているのでよく分かるが、価格に対する質が高い。安めのスーツケースだと、例えばキャスター(車輪)だったり、取手が壊れたりするが、Awayのスーツケースではそれが起きていない。スーツケース自体の素材もしっかりしていて、チープな感じは全くしない。
機内持ち込み可なスーツケースには、取り外し可能なバッテリーが組み込まれていて、携帯電話やパソコン等の充電に使える。
ちなみに、キャスターには、360度回転する日本の日乃本が使われている。
最近リリースされたアルミニウムのスーツケースは、リモワのそれを思い起こさせるが、価格はおよそその半分だろう。僕はリモワのスーツケースも使っていてとても好きだが、次にまたスーツケースを買うとすればAwayで買うかもしれない。
インフルエンサーやインタビュー記事等を利用したマーケティング
マーケティングが巧みだと思う。インスタグラムでフォロワーの多いインフルエンサーや、上述したカーリー・クロスやジェシカ・アルバ等のセレブがAwayを使っている写真を載せ、それがバズり、ブランドイメージが高まっていく。
加えて、創業者の二人が様々なメディアのインタビューに載り、Awayの顔となることで、宣伝効果が生まれていると思う。
クールでお洒落なブランドイメージが出来上がり、sweetgreenの記事に書いたように、Awayのスーツケースを持つこと自体が、自分のアイデンティティを示す手段になっていると思う。
まとめ
以上、Awayについて分析してみたが、いかがだっただろうか。内容を以下のように纏めてみた。
- AwayはDTCでスーツケース等旅行用具を販売するスタートアップ
- 創業2年目で売上高は約13億円に達し、約91億円を資金調達済
- マージンを取りやすく、返品の少ないスーツケースを先ず商材として選択して大ヒット
- 日本製のキャスターや充電に使えるバッテリー等、価格に対して高品質
- インフルエンサー・マーケティングが巧みで、熱狂的な支持者を創出
会社としては、旅行に関するNo1ブランドを目指しているらしい。個人的には、製品の販売に留まらず、Awayの世界観を表現したホテル事業を始めたり、旅先でのユニークなイベント等を企画するのも、ブランドイメージを高める意味で面白いのではないかと思う。
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