返品を最適化する次期ユニコーン候補 Optoroのビジネスモデルとは

今回は、オンライン・オフライン両方において、返品された商品の再販売を最適化するスタートアップ「Optoro」について見ていこう。

Optoroとは

Optoroは、前身企業のeSpotとして、当時大学生だった創業者によって、米Washington DCにて2004年に設立された。彼らは、店舗で8%・Eコマースで30%にも上り、アメリカだけで$500B(≒55兆円)ともいわれる返品・ロジスティクス市場を対象にサービスを提供している。

現在は、アメリカに3つのオフィスと2つの倉庫を持つ、急成長中のスタートアップだ。

Optoroのビジネスモデル

これまでの返品ロジスティクスは、何層にも重なっていて非効率だ。上の図にあるように、消費者/小売店→物流→ベンダー→物流→小売の清算業者→物流→卸売業者→再販売業者→消費者と、ひどく長いプロセスがかかる。返品されてから、再販売されるまで、4-6ヶ月もかかるようだ。

この何層にも渡る非効率なプロセスをシンプルにするのが、Optoroの提供するソリューションだ。返品する消費者と再販売先までを、基本的にOptoro(配送のUPSも含む)の仲介で繋ぐ。

AIベースのSmartDispositionエンジン

Optoroが提供するサービスの心臓は、このSmartDispositionだ。これは、返品された商品を機械学習を用いて分析し、自動で振り分け、最適な再販売先を決めてくれる。システムの判断を元に、倉庫の作業員が再販売先への配送作業を始める。

再販売先で売れるだろう価格やそれに係るコスト等を、1,200と言われる種類のデータを元に、自動で分析するのだ。

Optoroの顧客であるベンダーは、Optoroへのフィーを支払った後でも、これまでの方法で再販売するよりも効率的に・高いリターンを得ることが可能になる。

自社販売サイトのBlinqとBulq

SmartDispositionが自動決定する再販売先は、AmazonやeBay等のマーケットプレースに加えて、Optoroが自社で運営するサイトがある。B2C(消費者向け)は、Blinqだ。通常より最大7割値引きされているので、お得感満載だ。

まとまった量を売るB2B(法人向け)には、Bulqを自社で運営している。

自社で個人・法人向けに直接返品された商品を売るサイトを持つことで、既存のAmazonやeBay等での価格が低い場合に、再販売価格を最大化することが可能になっているはずだ。

配送は株主のUPSが担当

返品の配送は、巨大ロジスティクス会社のUPSが担当している。彼らは、Optoroの株主にも入っている。

ちなみに、UPSの競合であるFedExは、Optoroの競合であるGENCOを、$1.4B(≒1,500億円)にて買収し、現在はFedEx Supply Chainという名前でサービスを運用している。

顧客には小売のビッグネームが並ぶ

顧客には、小売のビッグネームが並ぶ。BJ’sは日本でも人気のコストコの競合、jetは設立から僅か2年弱でウォールマートに$3B(≒3,300億円)で買収されたEコマース企業、Staplesは文房具やオフィス用具等を全米で販売する小売企業だ。

Optoroが公開しているのはこれだけだが、多くの顧客企業は非公開を望んでいる。返品された商品を、Optoroを利用してより安価で再販売をしていると公に発表すると、通常価格等にネガティブな影響が出るかもしれないからだろう。

巨額の資金調達とKPCBも含む株主

Optoroは、これまで合計で$244M(≒270億円)もの資金を調達している。主な資金用途は、エンジニアの採用や自社倉庫の確保と作業員の採用、自社販売サイトのマーケティング費用だろうか。

株主には、シリコンバレーのトップVCであるKleiner Perkins(KPCB)、Optoroと同じくワシントンDCに拠点を持つRevolution(AOLの共同創業者であるSteve Caseが設立)、そして大手ロジスティクス会社であるUPS等が並ぶ。

VC投資では、主にシリーズB以降のグロース・ステージで投資しているイメージのある、巨大資産運用会社のFranklin TempletonがSeries Eで入っているのもおさえておくべきだろう。

まとめ

今回は、オンライン・オフライン両方の返品の再販売を最適化するOptoroを見たが、いかがだっただろうか。

  • Optoroは、小売(オフライン)とEコマース(オンライン)の返品された商品の再販売を最適化するスタートアップ
  • 返品市場は巨大な一方、大半が廃棄される等、問題が多いマーケット
  • ベストな再販売先を自動で決定する、自社製SmartDispositionシステムが、競争優位の源泉
  • BlinqとBulqという、自社のB2C・B2Bの販売サイトを運用することで、最適な再販売価格を供給
  • UPSを株主に迎えることで、配送を一任

市場規模が大きく、問題がある一方、これまでソリューションが供給されてこなかった市場なので、Optoroの今後の更なる躍進に注目していきたいと思う。

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